ジョイアの話

ジョイアはイタリア人。

私より少し年上。髪の毛が巻き毛で、栗色。目は深い緑。背が高く、スタイルがいい。

おどけたり、笑ったり、いつもくるくると表情が変わる、不思議と人を惹きつける雰囲気を持っていた。

デンマークの大学を卒業し、中国に住んだり、国内外をいろいろと旅したり、好きな仕事をしたり、自由奔放に生きている感じだった。

いろんな才能に恵まれているのだと思うが、全く飾らない。不思議とみんなの空気を盛り上げる、誰からも愛されるような人だ。

私たちは、イタリアのシチリア島で、オリーブを収穫しながらキャンプしていた。

メンバーは、アメリカ人のダニーロ、ベルギー人のアナ、イタリア人のジョイア、そして私だった。

みんな20代で、大学院を卒業して、ひとり旅に出てるところで、こうやってファームステイしながらお金を節約してるのだった。


肉を炭火で焼くも、ライトがないため焼けてんだか焦げてんだかもわからんw でもうまかった。

この農場にはトイレもなく、シャワーもない。スーパーなんて何時間も歩いた先にしかない。
あらゆる文明から切り離されていた。 ここに私たちは5日間ほど滞在した。

真っ暗闇の中、火をじっと見つめつつ、自家製ワインを飲みながらいろんな話をしていた。

ふとジョイアが切りだした。

「みんなには忘れられない話はある?」

ここで話し始めた、彼女の話がおもしろかったから書き残しておこう。

ジョイアの話

「私が大学生の時だった、面白いイベントに参加したの。

これはゲームみたいなもの。

3人1組のグループになって、決められたルートをいかに他のグループより早くゴールできるかを競うの。

ヨーロッパのある国からある国までの、長いルートの中に、(詳しい国は忘れてしまった)チェックポイントがいくつかあって、それを通過しなければならない。

でもこれには条件があって、お金も携帯電話も持つのは禁止

とにかくグループのメンバー3人で協力して、移動手段も、宿も、食べ物も、なんとかして調達しなければならない。

私のグループは、もう1人は女の子、もう1人は男の子だった。いいチームだったよ。

ゲームも中盤ごろだったかな・・・ ヒッチハイクをして、ベルギーのとある小さな町に降ろされた。

ここがなんていう町なのかもわからない。

とにかく誰か町人に聞いて、泊めてもらえるように頼み込まなければならない。
でも暗くなってきていたので、辺りはとても閑散としていた。

疲れ切ってトボトボと3人で歩いていると、やっと人影を見つけた。
私たちは逃すまい!と必死でその人を追いかけて声をかけた。


彼は・・・その、なんというか、怪しい雰囲気が漂っていた。
中年で、でっぷりと太っていて・・・なんだかとにかく変な人だったの。

でも私たちはなんとかして今日の寝床を見つけなければならないから、構っていられなかった。

彼は英語がわからない様子だった。

私はイタリア語が話せて、もう1人はスペイン語が話せたから、とにかく言語をごちゃ混ぜにして、なんとか伝えようと試みた。


伝わったのか伝わってないのかわからんけど、その怪しい中年男性は、言った。

「ついてこい」


私以外の2人は、「本当に本当にラッキーだぜ俺たち!ウヒョー😎」といいながら嬉々としてついて行っていたんだけど、私はどうしても素直に喜べなかった・・・・

明らかに雰囲気ヤバかったもん、あの人。

「ねえ、このひとなんか変だよ、ヤバいんじゃない」ヒソヒソと2人に言ったけど、
能天気な2人は「だあいじょうぶだってえ〜〜」と耳を貸さない。

やがてその人の家らしき場所に着いた。

家の中の散らかりようと言ったら!

とにかくたくさんの本がこんな風に(ジョイアは、本を広げて背表紙を上にしてどんどん重ねるジェスチャーをした)部屋中に、うず高く積まれていて。いろんなものが散乱してた。
室内は暗くてなんだか怪しい雰囲気。


仲間2人も、何かを感じ取ったのか、
アレ、チョットヤバクネ・・・?
と、興奮がしぼんだのが伝わってきた。

そして私たちは屋根裏部屋に通された。

その家主は、もう1人の女の子に、「お前はここで1人で寝ろ」と指名した。

いや、これはやばいやつだ。と感じ取った私たちは必死に言った。

「私たちは!! ここで!! 3人で寝る!!」
(できる限り最大限のジャスチャーとともに)

「ダメだ、1人、ここ、寝ろ」

「それは!!できない!! 3人で!!!一緒に寝る!!!!!!」


その押し問答がしばらく続き、先に折れたのは、怪しい太った中年男性だった。

そしてその夜、私たちはその狭い屋根裏部屋で、身を寄せ合って寝た。
ドアに鍵がなかったから、内側からできるだけたくさんの本を積み上げてバリケードにして、胸にナイフを隠し持って。

あんなに長くて怖い夜はなかったなあ。

そしてようやく朝を迎えた。私たちは生きていた。

そしてその家主は意外にも朝ごはんを用意して待っていた。

私たちは礼を言って、その家を出て、駅を探した。

ようやく着いた駅で、駅員に説明して、タダで電車に乗せてくれるように交渉をした。

そこでようやく私たちがベルギーのどこにいるかわかったってわけ。

あ、でね、その後チェックポイントを通過したんだけど、そこで私たちはトップに立っていたんだよん。嬉しかった〜。」


<ジョイアの話、完>

私の感想

なんだかものすごく心に残る話だった。
今でもありありと思い出せる。あの時私は、ジョイアの話に引き込まれていた。


てかまず、そのゲームまじで凄すぎるでしょ!!

何も持たずに旅をするって・・・やばない?


だって、お腹が空いたら知らない誰かに頼んでご飯を恵んでもらわなきゃいけないわけでしょう?

夜はその場であった人のうちに泊めさせてもらうようにお願いしなきゃならない。

ゴールするためには、どうにかして、交通手段を見つけて、運転手に頼み込んで乗せてもらわなきゃならない。


この経験したら、本当に大事な能力を得られそうな気がする。サバイバル能力とでも言おうか。

人の善意に頼り、自分の必要なものを伝えること。生きる上で本質的に必要なものだよね。

・・・・私もやってみてーーーー。

そしてジョイアの語りが、またうまかった。人を惹きつける話し方。

満点の星空の下、キャンプファイヤーの明かりに顔を照らされながら、生き生きと表情豊かに話す彼女は素敵だった。 私も彼女のようになりたいな。

異空間。日本の、あの日常では体験できない、強烈な記憶として私の脳みそに刻み込まれたのである。


ああ、これだから新しい人と出会うのは癖になるのだ。

終わり。

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